橋のない川という物語は、私にとってとても心深い印象を与えてくれました。 部落差別の問題を童話的に淡々と書かれています。しかし、その中身はとてつ もなく重い内容でした。部落差別とはいったいどういうことなのかを知るために、この「橋のない川」という小説を手に取りました。この物語の題材は、被差別部落の生活が書かれています。そして主人公が履物の製造に関わるということに着目したのです。なぜならば、私も履物の製造に関わっているからです。なぜ、履物なのか最初はよくわかりませんでした。
しかし、他の文献で調べるうちに履物の製造が被差別部落の職業の一つであると知りました。これは、封建社会のなかで被差別部落の人達は非人として扱われ、人間の足の下に置かれる立場として履物を生業としていたのです。江戸時代に団左衛門という人がおり、御上から許可を受け被差別部落を仕切っていたことがわかりました。そして、当時の履物は草鞋でした。その草鞋を独占的に被差別部落は作っていたのです。その関係上、履物という職業を橋のない川では取り入れたのでしょう。
明治、大正の時代を背景にこの小説は書かれています。部落解放を願う人達の人権の戦いがテーマでありますが、奈良県の生駒地方の一農村の人達の生活を織りまぜながら、その世相を浮き彫りにしています。 小作農民の苦悩、そして、差別をしいたげられた苦悩がそこにはありました。最下層で生きるとはどういうことなのか、私は経験がないのでわかりません。 ただ、この本を読んでいくうちに差別とはどういうものなのか理解ができ、何度か涙が込み上げてきました。今現在、封建社会は薄れ身分的なものはなくなりつつあります。
そして、今も差別をなくすために人力を注いでいる人達がいます。 私は、この橋のない川を皆さんが読んでいただければ、差別意識は無くなると信じています。人間は裸になればみな同じなのです。お互いが助け合いながら生活をお くることが本来の姿です。この本の著者である住井すゑさんは人間はみな同じであり、平等でなければならないと言われています。学校や会社でいじめの問題が多発している現代、一人々が助け合う心を持つ意味で、この小説を読んでみて下さい。
文庫本全7巻
住井すゑ 1902年〜1997年
2004年記述。2019年7月更新しました。
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